
2017年2月25日(土)に、麻雀最強戦2017の最初の予選「鳳凰位対最高位決戦」が行われ、石橋伸洋(最高位戦日本プロ麻雀協会)が優勝、ファイナル進出を決めた。プロ連盟と最高位戦の頂点による激闘を、現最強位・近藤千雄とオフィシャルレポーター・梶本琢程がレポートする。


放銃を怖れなかった石橋がファイナルへ!
梶本「今年の最強戦のオープニングマッチは、プロ連盟と最高位戦の頂点同士の対決となりました。この対局を制したのは最高位戦の石橋伸洋プロです。近藤最強位はこの対局をどうご覧になりました?」
近藤「勝った石橋さんは放銃を怖れないスタンスで戦っていたと思います。たとえば決勝の南3局1本場。東家の瀬戸熊さんのリーチに対し、トップ目の石橋さんはタンヤオのカン七索待ちで無筋の八索を押してるんですよね」
南3局1本場

梶本「あ、これ驚きました。石橋329、村上305、瀬戸熊191という点数状況で、親リーに挑んだんですよね。『トップ目なのに親満放銃したらどーすんだ』って思いましたけど…」
近藤「石橋さんはラス親だから、仮に瀬戸熊さんに親満を打ってもオーラスで親満ツモで差し返せる。逆にアガり切れば、オーラスで『アガってもよし、ノーテン流れでもよし』の状況を作れるから、リスクを負う価値が高いと踏んだのでしょう」
梶本「なるほどねぇ」

親でドラポンをスルーした理由とは?
近藤「でも、予選の石橋さんには疑問だと思う選択もありました。あのドラポンを見送った局」
東3局2本場 東家・石橋 38900持ち

梶本「西家・藤崎智の捨てたドラ八筒を親の石橋はポンしなかったんですよね。謎の見送りだな、と」
近藤「石橋さん、何て言ってました?」
梶本「『トップ取りなら当然ポンですが、あの局面は2着取りシステムでもなかなか特殊な局面で…』という前置きの後、『ドラ切りでテンパイ濃厚の藤崎さんにオリてもらいたくなかった。親のドラポンだとオリちゃうかもしれないので』と」
近藤「つまり、石橋さんとしては、自分の親が平穏に流れればOKということですか。両脇(近藤誠一・勝又健志)が大物手をツモるより、ドラなしの藤崎さんならツモられてもダメージは小さいから」
梶本「近藤さんならポンでしょ?」
近藤「はい。自分なら、親が2回残りの勝又と2万点差。まだ先は長いと思ってポンしますね。鳴いてもまだ安全牌はありますし。そもそも親、というかトップ目のドラポンは状況的に有利なんですよ」
梶本「どういう意味です?」
近藤「たとえば3・4着の人はトップ目のドラポンに対し、無理に競りかけないと思うんですよ」
梶本「たしかに。トップ目はこのまま逃がしていいか。それよりドラポンに放銃するのが最悪だ、と思いそうです」
近藤「仮に石橋さんが2着めなら、ドラポンの手はアガられたくない。ワンツー体制が強固になって、勝ち上がりが危うくなるからです。3着4着は無理してでも潰しにくるんじゃないですかね」
梶本「だからこそ、トップ目で親の石橋はポンしておくべきだったんじゃないか、と」
近藤「スルーできるのは、それだけ石橋さんがゲーム回しや展開読みに自信があるってことでしょう」
最近流行りの国士リーチ
梶本「その他で近藤さんが気になった局はどこですか?」
近藤「やはり村上さんの国士リーチの局ですね」
梶本「B卓南1局1本場、親の瀬戸熊直樹プロが三・六・九萬待ちの先行リーチ。これに対して村上淳プロが九萬待ちの国士(全体牌図参照)。テンパイは四萬切りのところで入っていたのですが、八索ツモ切りの後、中を空切りで追っかけリーチ。リーチの狙いは、国士をぼかすことと考えてよいでしょうか?」

近藤「でしょうね。ただ、相手にソーズのメンホンチートイツなどと錯覚させるんだったら、中切りリーチはちょっと変なんですけどね?」
梶本「それはどうしてです? 村上も対局後の打ち上げの席で『リーチは相手にメンホンチートイツだと思わせるためなんですが、そのわりに宣言牌が中なのは少し変なんですけどね』と言っていたんですよ。2枚切れの中切りリーチのどこが変なのでしょう?」
近藤「村上さんが追っかける前に瀬戸熊さんのリーチにソーズの無筋を2枚押してたんですよ。それはメンホンチートイツのイーシャンテンにしては変じゃないか、と」
梶本「…たしかに。テンパイだとしても、とりあえず無筋よりは2枚切れの中切りそうですね。普通は」
近藤「で、そこまで中待ちで押したのに、結局リーチの待ちは中じゃない。どういうこと? って思っちゃいますよ。それで国士を看破されるわけではありませんが、相手は違和感を持つでしょう」
梶本「なるほど」
近藤「もちろん『リーチだから国士はない』と錯覚することもある。そもそも瀬戸熊プロのリーチが三・六・九萬が出にくい捨て牌だったから九萬が出る展開にはならなかったので、一応リーチは正解っぽかったですね。前田直哉プロも金子正輝プロもヤオチュー牌捨ててましたし」
梶本「まぁ今回のように国士でリーチをかけるのは特殊なケースでしょうね」
近藤「いや、それが意外とそうでもないんですよ。雀王戦のAリーグではよくあるという話を聞きますね。国士だと思わせないため、プラス中張牌も警戒させるために。そうして足止めをしているうちにツモ回数を増やすという意図がある…とか」
梶本「へぇ。僕は国士を空振るほうが嫌だからヤミテンしちゃうなぁ。近藤さん自身は国士リーチについてはどう思います?」
近藤「『あり』だとは思います。捨て牌一段目のリーチなら他の手役も考えられるので」
梶本「でも、結果ベタオリされて国士アガれなくなるのは嫌じゃないですか?」
近藤「それは嫌ですが、リーチにオリた結果、逆に国士のアガリ牌が出ることもありますし。ですから捨て牌と巡目をふまえて判断すべきでしょう」
梶本「なるほど」

もったいない金子の敗退
梶本「B卓といえば、金子さんの敗退はもったいない気がするのですが。オーラスのトップ目、放銃さえしなければ通過濃厚のところでした」
近藤「金子さんは役なしカン八索テンパイ。ここではリーチ・ヤミテン・テンパイ崩しの3つの選択がありました」
B卓南4局2本場 北家・金子 34200点持ち

梶本「金子さんはここで打五筒でリーチ。結果、3着の南家・瀬戸熊に追っかけられて放銃し、3着に転落し敗退してしました。ちなみに近藤さんならどう打ちます?」
近藤「僕ならドラの八筒を切ってヤミテンですね」
梶本「ヤミテンはともかくドラのほうを切るんですね。なぜです?」
近藤「まず、トップ取りならリーチもありだと思います。ただ、2着取りならもっと安全に構えても充分だった。ドラ切りの理由としては、このときは親の村上さんが早々に七・八・九萬で仕掛けていた。だから五筒か八筒なら八筒のほうが鳴いてもらいやすい」
梶本「村上にトップをまくってもらうほうが手っ取り早いですからね」
近藤「点数が読めたら放銃してもいいまでありますよ」
梶本「ちなみに、ここでのテンパイ崩しはどうですか?」
近藤「テンパイを取った方が親の現物も手に残ります。どのみち、流局まで先が長いので、テンパイに固執する気はなく、中盤を過ぎたらオリるでしょう。ひょっこりツモを期待してとりあえずテンパイを取った方がいいでしょう」
梶本「それだけ有利な状況だっただけに、金子さんの敗退は残念でしたね」
