
2017年3月4日(土)に、麻雀最強戦2017「女流プロ代表決定戦 激突!タイトルホルダー」が行われ、二階堂亜樹(日本プロ麻雀連盟)が優勝、ファイナル進出を決めた。現タイトルホルダーによる激闘を、現最強位・近藤千雄とオフィシャルレポーター・梶本琢程がレポートする。


「局収支」という考え方

梶本「今回は女流タイトルホルダーということで、現役チャンピオン同士の対局。近藤最強位はどういう印象でしたか?」
近藤「前の週に行われた鳳凰位vs最高位とは全然違ったテイストでしたね」
梶本「決勝戦も、全員が一度は優勝を狙えるポジションに立っていて。意外とああいうのって珍しいですよね。何もできない地蔵の人が1人はいることが多いのに」
近藤「全員の順位がころころ変わってましたね」
梶本「近藤さんが一番面白かったのはどこでした?」
近藤「前回は石橋(伸洋)プロがリードを守る戦いに徹して勝った。で、今回はそれとは対照的でA卓なら宮内こずえプロ、B卓なら大平亜季プロがそれぞれ『リードを広げる戦い方』で決勝に進んでましたよね」
梶本「たしかにトップ目に立っても攻めてましたね。予選で持ち点4万点台の宮内プロがリーチに押し返したときは驚きました」
東四局 西家・菅原リーチの捨て牌


梶本「リーチ一発があるところで宮内は七索を切ったんですよ。一応、リーチのスジだけど、現物が手に2枚あって、かつ自分のアガリが厳しそう。何より東ラスで4万点台という『安定政権』ですから、僅かなリスクすら負わないと思ったのですが」
近藤「一応345の三色のイーシャンテン。ただ、打点はあるけど愚形受け2つなので、どちらが埋まっても好形リーチは打てません。菅原さんとメクリ合いをしても勝つ可能性は低い。トップ目ならオリても不思議じゃないですね」
梶本「スジの七索ぐらいは行くか…って感じですかね」
近藤「これ、宮内さんは局収支で判断したのかも?」
梶本「局収支?」
近藤「『いまトップだから守る』みたいに順位ではなく、単純に親で東1局のような点数がフラットな状況として手牌をみて、押し退きを判断する方法ですね」
梶本「う~ん…。でも麻雀ってまず局と点数からその局ごとのテーマが決まって、押し退きの基準でそれに左右されるのが普通だと思いますが? 同じ手牌・局面でも行く時オリる時が分かれるものじゃ?」
近藤「だから何に重きを置くかってことでしょうね。たとえば最強戦ルールなら、東場はトップ取りのつもりで局収支で打つ。南場ぐらいから順位をみて打つという構えの方が僕はいいと思うんです」
梶本「ただ、決勝で4万点は全く安全圏じゃないが、予選ならわりと当確ポジションじゃないですか。普通はもっとガチガチに守りそうですが」
近藤「石橋さんだったら確実にオリると思いますよ。ただ、僕もこの七索は打つと思います。安全牌が2枚しかなくてオリきれるか、と、加点のチャンスの場面なのでそれを逃さないという意味で。東場だから、ということも大きい。さすがに南2局ならベタオリします」

トップ目愚形リーチの是非
梶本「同じく攻めが強かったのが、B卓の大平でした」
近藤「リーチ攻勢が凄かったですね」
梶本「その極めつけともいえるのが東3局です」
B卓 東3局8巡目 南家・大平 30000点持ち

梶本「大平はこのカン六索テンパイで即リーチ。ほぼノータイムでかけたんですよ」
近藤「たぶん『周りはトップ目のリーチには逆らいにくい』という押さえつけ効果を重視したんでしょうね」
梶本「でもソーズは一・三・四・八索ツモでピンフとまぁまぁ変化も多い形ですが」
近藤「あと、大平は四萬も捨てていたので、二・五・七索を引いてシャンポンに変化しても勝算があります。九索ツモだって、カン六索よりカン八索のほうがいい。手変わりが相当ある手です。ただ、ドラ1あるし待つよりは即リーだとふんだのでしょう」
梶本「実際どうなんでしょう。かける人多いんですか?」
近藤「いや~、これは僕はいけないですね。手変わり後のアガリ率がかなり違うと思いますので。押し返されたら怖いじゃないですか」
梶本「実際、魚谷(侑末)プロから追っかけられて結果大平の放銃で終わっちゃいましたね」
近藤「そのリスクは当然承知していたとは思いますが…」
梶本「こういうトップ目のリーチは逆らいにくいので、大平みたいに多少強引でもかけるべし、みたいなことを考える人が最近は多いんでしょうか?」
近藤「そうかもしれないです。でも結局、点差によるんじゃないですか。今回はさほど点差のない状況でみんなの攻めもキツくなりやすい。実際、魚谷さんに押し返されました。けど、もっと差のあるトップなら、他が2着狙いに切り替えやすいので、トップ目リーチの効果は高まりますね」
梶本「つまり、トップ目愚形リーチは定石とまではいかないけど、2着以内が勝ちというルーツでの引き出しの1つ、ぐらいに考えておけばよいという程度なんですね」
近藤「そうだと思います」

冷静な闘牌で二階堂がファイナル進出
梶本「では、決勝の話に移りましょう。見どころはたくさんあったのですが、個人的に興味深かったのは東2局(全体牌図)です」

近藤「ああ、大平が五萬を捨ててトイトイを崩したところですね」
梶本「たしかにリャンメンのほうがアガりやすいけど、リーチもない状況で満貫を1/3の点数に落とすほどの価値はあるのかな? と」
近藤「親の朝倉を警戒していたのかもしれませんね?」
梶本「場面だけでは見えにくい要因があったかもしれないので、本人に聞いたところ『あの時はトイトイテンパイになったものの、五萬が既に1枚切れ、六筒も1枚あるかないかくらいと思ったので、四萬か六萬、あるいは2枚切れの五筒ツモならリャンメンの2600にしようと思っていました』と『そろそろリーチがかかりそうかなと思ってました。たしか朝倉さん。でも東があるから最悪は回避できると考えていました』ということです」
近藤「つまりトイトイはあくまでオマケ。手役の渡りを打つ過程で先にアガリ牌が出る、は良くあるけど、その逆ですもんね。そもそも大平の仕掛けだしも面白いですよ」

梶本「チートイツのイーシャンテンから六索ポンですよね。ただ、これポンしても、明るい未来より『厳しい未来』が待ってる気がしませんか? 五萬・六筒というネックがありますし」
近藤「だから、これはあくまでネック解消が目的のポンなんじゃないですか? そうすれば後でリャンメンに変えたことも辻褄が合う」
梶本「近藤さん、これポンします?」
近藤「僕は結構チートイツ寄りなんですよ。イーシャンテンなら仕掛けないことが多い。チートイツはリーチをかければ打点もつくし、待ちも選びやすいですから。片やトイトイは、打点も限定されて待ちも選べないですから」
梶本「もうちょっと遠い手なら、ポンポン攻撃で相手に圧力をかけて字牌を切りにくくする、という効果も見込めるんですけどね」
近藤「でもここからトイトイに行く人も多いし、好みの差なのかなという気もします」

梶本「では、最後に優勝した二階堂亜樹プロについて」
近藤「二階堂さんは終始安定してましたよね。東1局に宮内さんからハネマンを直撃した後、その宮内さんに親っパネを打ち返す、なんてこともありましたがずっと冷静だったと思います。ただ、オーラスは1局で決められなかったことでラス親・朝倉の追い上げを許し、胸中は穏やかじゃなかったでしょうね」
梶本「朝倉の親が続くうちに、宮内のバイマン条件の逆転リーチを受けたり、直撃を食らうとヤバイ朝倉のロン牌を掴んだり。最後には大平のリーチを受けてツモられたり(結果は裏ドラが乗らずに逃げ切り勝ち)、とか色々ありましたもんね」
近藤「まぁそんな状況でも勝ちを急いで焦った打牌がなかったのは流石です。実力通りの勝利だったと思いますよ」

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