2017年11月5日(日)に、麻雀最強戦2017「男子プロ代表決定戦極限の攻戦」が行われ、多井隆晴が優勝、ファイナル進出を決めた。雀豪著名人8名による死闘を、現最強位・近藤千雄とオフィシャルレポーター・梶本琢程がレポートする。

独特の勝負強さを持つ森下
梶本「今回の極限の攻戦。予選から内容の濃いというか見どころが多い対局ばかりでしたね。全員が活躍している打ち手ばかりなので当然といえば当然ですが。で、ここを制したのが多井隆晴プロでした。その多井プロがファイナルではD卓なので、近藤最強位とぶつかります。昨年のファイナル決勝卓で明暗を分けたお二人がここで再び相まみえるということになりましたが、どういうお気持ちですか?」
近藤「いや~。僕もどうなるんだろうと思って生放送をずっと観戦していたんです。多井さんが森下剛任さんに7700を放銃したときは『さすがにキツな』と思いました」
南3局
森下のアガリ

梶本「この局が1つの分岐点でしたね。多井プロも開けられた手牌を見て『あ~2000点か』と一瞬ほっとしたのに裏ドラが2枚乗って相当ガックリしたようで」
近藤「まあ全員2万点台の僅差で親のない多井さんの立場からするとキツいでしょうね。この局は森下さんのイーシャンテンでの選択が面白かったです(全体牌図)」

梶本「森下プロはここで五筒切りだろうと思いましたが、結局七索切りを選択しましたね」
近藤「大体の人が五筒を切ると思うんですよ。四筒を引いたら即リーチだし、六筒を引いたらトイツ落としでピンフ一通を狙って行くんじゃないでしょうか」
梶本「なぜ七索切りだったのか。これを直接森下プロに聞いたところ『五筒を1枚捨てた瞬間に多井さんにリーチをかけられるのが嫌だったから」ということなんです」
近藤「ということは多井さんに対し二五筒が相当危ないと思っていたんですね。じゃ、ピンズのチンイツ狙いの打七索じゃなかったんだ」
梶本「そうなんです。実際問題ここからチンイツは、狙えなくもないですけど相当アガりづらい。けど、多井プロの5・6巡目の手出し六筒一萬をみて五筒を浮かせたくなかった。もし、七索切りの直後に多井プロからリーチがかかったら、三筒一筒と捨てて凌ぐつもりだったそうです」
近藤「まぁ二筒を引っ張りすぎたという感覚もあったかもしれませんね。この牌図の形だと二筒を先に捨てて、安全度の高い発を残す手もあるじゃないですか。ピンズの下を一二三筒に固定して、六筒とか六索を引いたらそこをリャンメンにしてピンフに向かうとか」
梶本「そうですね。そしたら7巡目に3枚目の二筒を持ってきてさらに困っちゃった。もう多井プロのリーチがいつかかっても不思議じゃないし、今から処理しても間に合わないかもしれない。だからこその七索切りなのでしょう」
近藤「実際、すぐ多井さんからリーチがかかりましたね。待ちは二五萬のメンタンピンドラ1ですが」
梶本「しょうがないから三筒一筒を切ろうと森下プロも思っていたようです。するとすぐに4枚目の二筒を引いてテンパイ。まぁこれなら勝負できますね。多井プロの危険スジを固めてリャンメン待ちですから」
近藤「結局、五筒切りでも同じ一四索待ちなのですが、それだと残った五筒が勝負牌になりますもんね。ただ、これだと押せない可能性もある。それだけにこの7700は優勝への手ごたえも十分のアガリだったでしょう」
梶本「森下プロにはこういう独特の勝負強さがあると思うんです。このアガリをみてそれを再認識しましたね」


多井、奇跡のハネ直で蘇る!
梶本「ここで一歩抜け出した森下プロは、次局もともたけプロの一通リーチ・山井プロのメンピンドラ1のリーチに1牌無筋を押し返して3900をゲットして4万点を突破。ただ、次の局に事件が起こるんですね」
近藤「多井さんへのメンチン放銃ですか」
梶本「南3局2本場、先にテンパイを入れたのが多井プロです」
南3局2本場10巡目 西家・多井 17300点

梶本「この時点でトップの森下プロとの点差は23500点。待ちの形や変化を考えればヤミテンで倍ツモかハネ直を狙いたい。で、その直後に森下プロもテンパイ」
南3局2本場11巡目 東家・森下 40800点

梶本「で、森下プロはダメ押しのリーチに出ます。場の状況からしても一四筒待ちは最高で実際山に6枚いました。方や多井プロのカン五萬は山に1枚」
近藤「でもその1枚の五萬を森下さんが掴んでしまう。残酷だなぁと。でも結果はともかく、トップ取り麻雀において森下プロのリーチ判断は正しいと思います。来るべきオーラスの山井さんとの一騎打ちに備えて、点差を広げにいくべきですね」
梶本「森下プロもこのリーチ自体に後悔はなかったようです。ただ、6枚対1枚のめくり合いに負けた不運は相当熱かったようで。先日も2週間ぶりに顔を合わせたんですが、開口一番『やっぱ悔しいですわ~』って言ってました」

因縁の対決がD卓で実現!
梶本「この奇跡のハネ直で勝負はオーラスを迎えました」
多井 30900
森下 27200
ともたけ 25300
山井 16600
梶本「ラス親の山井プロも満貫ツモOKの状況ですが、その山井の配牌に字牌が固まっていて2巡目でこの形になっていました」
南4局2巡目 東家・山井


梶本「で、この直後に森下プロから北が出るんですが、これをスルーします」
近藤「たぶん7、8割の人が鳴きますよね。北ポン白ポンで単騎でロンの形ですし。これ見送るのは凄い」
梶本「次に出た白はさすがにポンしましたが。が、これだと次の北は止まらないし、南西が重なれば正真正銘の絶テンでした」
近藤「ただ、問題は南西北がどこにいるか。こればかりはどうしようもなくて。全員がアガリに向かってくる状況だと先にテンパイ入れておきたいです。なかなか北スルーはできないですよ。ただ、僅差のオーラスとはいえ北ポンから入ったら、次の白を止める人は止める、と考えていたんでしょうね」
梶本「一方、多井プロも選択が難しい手牌でした」
南4局2巡目 南家・多井

梶本「この直後五索が出ます。対局後に多井プロが語っていたように五索ポンも考えたそうですが、これは見送り」
近藤「鳴くとソーズが1メンツだけになって苦しそうですしね。ピンズで2メンツは見込めるとして、四索ツモや六索チーなどでソーズも2メンツ作ろうとしたら、やはり鳴かない方がよさそうです」
梶本「で、同巡に上家から出た四萬。今度はこれをチーして打九萬」
南4局3巡目 南家・多井

梶本「まだまだ苦しい形ですが、ここから上手く手牌をまとめカン四索待ちのテンパイを入れ、アガり切りました」
近藤「多井さんも普段はこういう仕掛けをしなさそうですもんね。逆に言えば、いざとなればできる。流石だと思います」
梶本「さあこれでいよいよ後は本番を残すのみとなりました。あっという間の1年じゃなかったですか?」
近藤「そうですね。ただ、今年まだ大きな勝ちがないので、最強戦を連覇して再びプロの実績を積み上げなければと思っています」
梶本「まずはD卓でのトップですね。多井プロとの因縁の対決、楽しみにしています」
近藤「はい、頑張ります!」


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