麻雀最強戦2017 ファイナル【観戦レポート】

2017年12月10日(日)に、麻雀最強戦2017ファイナルが行われ、金太賢が優勝、雀王を戴冠した勢いそのままに最強位となった。激戦を勝ち抜いた4名による死闘を、オフィシャルレポーター・梶本琢程がレポートする。

見事雀王と2冠を決めた金太賢
見事雀王と2冠を決めた金太賢

プロとしての宿命

午後10時、長い戦いを経てファイナル決勝卓に座る役者が揃った。前原雄大との壮絶な戦いを制したメンチンのバビィこと馬場裕一。ぶっちぎりだった浅井裕介を親っパネ一撃で差し切った雀王・金太賢。箱下2万点からラス親で怒涛の追い込みを見せる水口美香を振り切って勝ち上がった最強戦の常連・猿川真寿。そして、昨年のファイナル決勝卓のリベンジを見事達成した最速最強・多井隆晴。

 

起家より金・猿川・馬場・多井の並びで対局が開始。始まって早々、いきなり山場がやってきた。配牌で発が2枚、中が1枚しかなかった多井の手がこんな形に仕上がった。

 

東1局9巡目 北家・多井

ホンイツ小三元のハネ満テンパイだが、この時点で発も山に1枚生きている。東パツの一撃で最強位が決まるか。そんな予感をギャラリー一同が感じていた。だが、すぐに馬場がチートイツドラ2のテンパイで追いつく。多井のペン七萬も絶好の待ちだが、大三元に変化したら逆にアガリは難しくなるかもしれない。

 

だが、馬場が待ち頃の九筒に待ち変えした直後、多井は九萬をツモ。打八萬で高目大三元の形に変化した。

当然? ただ、多井自身はほぼ確実なハネ満テンパイからある意味運任せの役満に変えざるをえないことに不安を覚えた。他家の捨て牌をみると、金が第一打から九八萬の切り出し、猿川は第二打から八六萬、馬場も第四打に八萬。つまり他家が七萬を使っている可能性が相当に低い(七萬が手にあればその周辺牌が出る巡目も必然的に遅くなるため)のである。それを100%出はない発、そして最終手出しが4枚目の八萬の九萬とのシャンポン待ちでは一気にアガリづらくなる。

 

多井「でも、ここで待ちを変えずに発でアガリを逃したら、今後プロとしてやっていけなくなっちゃうので」

裏目を引けばそれこそプロ人生に大きな汚点を残すことになりかねない。プロとしての意地が大三元を崩すことを許してくれなかったのだ。

 

皮肉なことに多井が待ち変えした直後、七萬が金・馬場の手に訪れる。金は七萬が不要だがイーシャンテンではまだ切れない。一方、馬場は逆にチートイツには待ち頃の牌なので当然待ちを変える。ところが直後、馬場は九萬をツモ。安目とはいえ多井のロン牌である。多井の最終手出しが4枚目の八萬なので、八九萬→九九萬、あるいは七八萬→七七萬へ変えたことを推理すればどちらも打ちづらい。だが、馬場は「仮に多井が大三元ならどちらで当たっても安目」と腹を括って七萬を勝負した。だが、これにより馬場は空テン。逆に安目の消えた多井に大三元成就の可能性が高まった。

 

だが、最強戦の女神はそう簡単にケリをつけさせなかった。終盤17巡目に金もピンフのテンパイで追いつく。

 

東1局17巡目 東家・金

この安目の九筒が馬場の手から放たれ1500のアガリでこの局は決着。多井の勝負手は水泡に帰した。

 

今年も決勝まで進み大三元テンパイをみせた多井隆晴
今年も決勝まで進み大三元テンパイをみせた多井隆晴

一番苦しかったオーラス

東2局以降は重い展開が続き、全員がチャンスをつかめないまま東場を終える。南1局4本場の時点でトップ目は猿川の29000点。だが、ここから金が親で粘りをみせる。メンピンツモ・役牌ハイテイなど小刻みに点棒を積み重ねていった。また猿川も離されまいと粘ってトップ目を奪い返す。猿川・金が決着権を握ってオーラスを迎えた。

 

南4局、ラス親の多井は一撃ならハネツモが条件。一方、馬場は倍ツモの苦しい条件だ。

だが、馬場は執念でマンズのホンイツに仕上げてきた。

 

南4局7巡目 北家・馬場 17900点

とはいえ倍満ツモには門前が絶対条件。役牌が出ても鳴けないまま、場に北が2枚、中が1枚出てしまう。メンホンチートイツだとリーヅモでも一発裏ドラをからめないと1ハン足らない。

 

馬場「チートイツなら残りツモ1回でリーチをかけるしかないなと思ってました」

 

しかし馬場はラス牌の中を引き寄せる。これならチャンタか一通を絡めれば一発裏ドラに頼らずとも倍満ツモが可能。そして11巡目、遂に待望の四萬をツモ。当然の即リーチである。

 瞬間、卓上に緊張が走る。リーチということは馬場が倍満条件をクリアしたことは即座に分かる。一筒五萬のシャンポンで先制リーチをかけていた多井は

 

「『馬場さんはメンチンリーチだぞ。猿川・金、はやく俺に打たないと決められちゃうぞ!』って心の中で叫んでましたよ」

 

同テンの五萬は山に1枚。この時点でテンパイまで程遠い金の自力決着は絶望的だ。

後ほど金は「この局が一番苦しかった」と振り返る。優勝を決められかけているのに自分は何も手が打てない。馬場のリーチはツモ専濃厚なので、必死に馬場のリーチの無筋を切り飛ばす金だが、到底追いつけそうにもない。あとは運を天に任せるのみ。

 

だが、金にとっては望外の形でケリがついた。同じくアガリトップで仕掛けに出た猿川が、多井のアガリ牌一筒を捨てたのである。

 

南4局13巡目 西家・猿川 35200点

ツモれば優勝のメンホン一通リーチを打った馬場裕一
ツモれば優勝のメンホン一通リーチを打った馬場裕一

猿川の多井への放銃により同点となった金と猿川。次局の配牌、金は決して良いとは言えない形を丁寧にまとめ上げ、配牌白暗刻の猿川に先んじてテンパイ。

 

南4局1本場7巡目 南家・金 33200点

9巡目、待望のロン牌九索が猿川から放たれ金が新・最強位の座に就くことになった。終始、厳しい顔つきで闘牌していた金が大きく息を吐き、ようやく表情が緩んだ。

猿川真寿はオーラストップ目からまくられ言葉が出なかった
猿川真寿はオーラストップ目からまくられ言葉が出なかった
死闘の決勝卓。終わったのは深夜12時を越えていた。
死闘の決勝卓。終わったのは深夜12時を越えていた。

わずかひと月で2冠王に!

この対局から3週間ほど前、初の雀王を獲得し、最後にファイナルへの出場権を獲得した金。わずか1か月の間に2つのビッグタイトルを獲得したことになる。過去には第10回野口賞を獲得し、若手のホープと期待された金だったが、自団体のタイトル戦とはなかなか縁遠かった。とはいえ、プロ歴13年の中、リーグ戦でマイナスしたのはAリーグ初年度のただ1回のみ。安定した成績でここ3年間は連続して雀王決定戦に進出している実力派だ。

 

金「リーグ戦で負ける気は全くしなかったが、雀王獲得は段違いの難しさでした」と振り返る。

 

金をよく知る打ち手は、「麻雀は王道タイプですが、いざとなれば何でもやります。たまに4センチ(3フーロ)イーシャンテンとかありますよ」と評する。時に慎重に構え、時に大胆に打つ。金の麻雀にはそんな印象を受ける。

 

たとえば予選突破を決めたB卓のオーラス(全体図参照)。絶好のドラの中を引き、高目チャンタのテンパイ。18000の出アガリでも良いので、高目が残り1枚でも打四筒としたいところだ。しかし金は一筒を捨てる。

 

金「下家の仕掛けがそこそこまとまっていると思い、四筒を鳴かれるのが嫌でした。結局、四萬でアガったら一緒ですし」

 

そして2巡後、4枚目の中をツモ。金はここで暗槓。ドラを見せれば浅井からの直撃が望みづらくなると考える人もいそうだが。

 

金「直撃を取りたいのは山々です。ただ、自分がテンパっているかがわかりづらい河ですし、待ちも薄いのでリーチする気もない。ヤミテンの直撃だけの可能性なら、暗槓してもさほど変わらないと思うんです」

 

今後、雀王として最強位としてまずます活躍の場が広がる金。果たして来年はどんな麻雀を披露してくれるのだろうか。非常に楽しみである。

各卓寸評

A卓

前原・馬場の壮絶な殴り合いとなったA卓。東場終了時には2人とも46000点台で二階堂亜樹・本郷奏多を圧倒。そこから馬場が一歩リードするも、南2局で剛腕・前原の倍満ツモが炸裂した。

 

南2局 北家・前原雄大

南3局2本場では前原の仕掛け、二階堂の親リーチを受けながら馬場が場に2枚切れのカン三萬で果敢にリーチ。これをツモって前原に迫る。アガリ競争となったオーラスでも馬場がキッチリアガリを決めて決勝進出を果たした。二階堂は親でチンロウトウをテンパイするも惜しくもアガリまでは結びつかなかった。「今回のファイナルで最も興奮した」という視聴者の評価も頷ける壮絶な半荘となった。

B卓

東場で石橋とのメクリ合いを制した浅井が安定したゲーム回しで局を進めていく。オーラスを迎えた時点で31700差。あとは金の親を流すだけだ。だが、ここで金がまず国士イーシャンテンの石橋から5800をゲット。さらに1300オールを決め、金が満ツモ条件まで迫る。

 

次局、ドラの中と南がトイツの配牌をもらった金。一方、好配牌の浅井も逃げ切りを狙って食い仕掛けに出る。ハネ満出アガリでもOKの金だったが、下家で食い仕掛けている浅井にシビアに対応し、ハネ満のツモアガリでケリをつけた。 昨年の近藤千雄に引き続き、全日本プロ代表決定戦優勝から最強位獲得という浅井のシンデレラストーリーはここで潰えた。

C卓

村上淳の先行リーチと平賀聡彦の一色手に挟まれ、オリ打ちで平賀へ満貫放銃という最悪の出だしとなった猿川真寿。平賀・村上が先行する展開で東場が進む。

 

ただ、南場に入って猿川が反撃。水口・村上の2軒リーチに割って入り、水口からリーチ一発ドラ3の親満をゲット。ここから猿川が一気に爆発し54700点まで稼いで逃げ切り態勢に入る。だが、一時は箱下22800まで沈んでいた水口がここから盛り返す。ハネ満の出アガリで猿川の連荘を止め、さらにラス親で6本場まで連荘。最後は逆転トップまであるリーチをかけたが、後がない猿川が必死の食い仕掛けで競り勝った。B卓・C卓ともにラス親の物凄い追い込みがあり、改めて北家スタートの優位性を思い知らされる対局となった。

D卓

昨年ファイナルで明暗が分かれた近藤千雄最強位と多井隆晴、さらに最強戦の常連で十段位の藤崎智も加わり予選屈指の好カードとなる。アマ最強位・影山恒太にとっては厳しい組み合わせだが、臆することなく堂々と戦っていた。

オーラス、ノーテンでも逃げ切れるラス親・多井に対し1300・2600条件のアマ最強位・影山が終盤にテンパイを入れリーチ。

 

南4局 南家・影山恒太

ツモれば文句なし。だが、途中藤崎からアガリ牌の七索が出る。が、影山は残り3回のツモに賭けて見逃し。だが残り1枚のアガリ牌を引くことは叶わず、多井が2年連続の決勝卓進出を決めた。

 

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レポーター

梶本琢程オフィシャルレポーター
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コメント: 3
  • #1

    スターらいと (水曜日, 17 1月 2018 10:17)

    とにかく長考が多すぎだった。あれでプロなの?

  • #2

    ヒロアキ (日曜日, 01 4月 2018 02:12)

    考え無く、若しくは直感頼り(?)の方が素人でしょう。何十通り何百通りのシミュレーションの中から正着を導くために小考(長考)は当たり前と当たり前と思います。

  • #3

    ^_^ (水曜日, 05 12月 2018 05:36)

    今決勝のDVD観終わったけど、キム長考多過ぎてストレス
    配牌から長考とかどういう事だよ