2018年3月10日(土)に、麻雀最強戦2018 サイバーエージェント杯 女流プロ代表決定戦 女流王者の極が行われ、仲田加南が優勝、ファイナル進出を決めた。女流王者8名による死闘を、オフィシャルレポーター・梶本琢程と最強戦実行委員長・金本晃がレポートする。

ルール変更に踏み切ったわけ
梶本「今年も麻雀最強戦が始まりました。今年のレポートは実行委員長の金本晃さんとともにお送りしたいと思います。」
金本「よろしくお願いします」
梶本「鈴木達也プロが優勝した男子プロ代表決定戦攻撃の極に引き続き、今年2回目の代表決定戦ですが、そのお話の前に今年の重要なルール変更についてお話を伺おうと思いまして」
金本「オーラスの親のアガリ止めを廃止したことですよね」
梶本「今回の対局でも西嶋ゆかりが昨年までのシステムなら…というシーンがありましたので。なぜアガリ止めなしに変更したのですか」
金本「去年の戦いを見ると北家の有利さが多くの打ち手から主張されました。オーラスで負けているときでも、子の2人がトップと大差ならなかなかアガれないので、結果的に親がやりたい放題になるからです」
梶本「2位まで勝ち上がれるときはラス親の優位性もたかが知れてますが、頭取りだと一気に有利ですもんね。トップがダントツのときほどラス親が連荘しやすい感じがありますよ」
金本「北家スタートで道中負けていたら『トップ目を押し上げておくほうがいい』という戦術すら飛び出す始末で」
梶本「ラス親はトップ目の一騎打ちに持ち込みたいですからね。トップ目にわざと放銃して他の親を流しつつ点差を広げる作戦もアリということになります」
金本「それは番組の視聴者からすると戦いを非常につまらなくする戦術だと思うんですよ」
梶本「まぁ、見ている人たちは全員がアガリに向かう対局を見たいし、2人が地蔵になるのは確かにつまらない。でも、打ち手は勝つための最善を尽くしたいでしょう。難しいところですね。そういえば昨年あたりからラス親の有利性を解消するための案を検討されてましたね」
金本「はい。本当は『ラス親の連荘を三度までとする』というようなルールが最もシンプルかつ問題にダイレクトに取り組む改定だと思います。ですが、まだそれは多くの視聴者になじみがないという意見もありましたので、ひとまず今年はアガリ止め無しにして北家有利を少し下げるということにしました」
6-9索でアガれたからリーチ!
梶本「さて、今回優勝した仲田加南ですが、実はアガリ3回でトップを決めたんですよ。途中では山脇千文美に5200も放銃しているし、ギリギリの勝ち上がりでした」
金本「仲田は今回の対局スピードに慣れていたように思います。逆に、水口美香や朝倉ゆかりは普段より頑張って早く打ったそうです。対局後の打ち上げの席でそう話していたので」
梶本「それは視聴者の見やすさを意識していたんですかね」
金本「おそらく。あと長考するとどうしてもオリが増えちゃいますからね(笑)」
梶本「たしかに。押せてるときは危険牌を引いても感覚的にスパーンと無スジを切れたりしますけど、反対に色々考えているときは勝負を保留したり決断しきれずに最終的にオリちゃうことが増えますからね」
金本「早く打とうとした結果ミスも増えたかもしれません。が、そのミスは2人を強くするミスだと思います。今後も放送対局での長考をなるべく減らして強く打って欲しいです」
梶本「仲田は『必殺!麻雀ラリアット』というキャッチフレーズからして攻撃型の印象ですが、実は守備もしっかりしていると思います。攻めと守りの落差が大きいというかメリハリがあるから攻撃面がより目立つというか。個人的にはスタジオ入場シーンでスタンハンセンのテキサス・ロングホーンをやっていたのが良かったです」
金本「あれ、前日夜にラリアットについて色々ネットで調べていたらしいですよ。そういうちょっとした努力や工夫は近代麻雀側にとっても嬉しいですね。大会を盛り上げようとする気持ちが感じられました」
梶本「今回主催のサイバーエージェント藤田社長も『ああいう役作りをしてくれるのはいいですね』と評価されていたみたいですよ。さて、一方で麻雀の方ですが、仲田の麻雀はかなり流れ重視のようですね。オーラスの構え方なんですが」
南4局1本場 西家・仲田

梶本「トップ目の東家・西嶋ゆかりとの点差は僅か3500点。リーチをかければ問題ないのですが、リーチ棒を出すと点差が広がるので流局時に西嶋がノーテンにできるという弱点もありまして」
金本「これは迷いますね」
梶本「結果、仲田はリーチをかけるのですが、その決断理由が面白くて。南2局1本場、仲田は親で2600オールをツモっているのですが、その待ちも6-9索。今回も同じ待ちになったから、これならアガれるとリーチにいったそうです」
金本「面白いですねぇ」
梶本「近頃、こういうコメントをする打ち手がすっかり減りましたからね。逆に新鮮でした」


麻雀に判定勝ちはないけれど
金本「この対局で僕が一番感動したのは朝倉さんの第一打3筒でした。逆に残念だったのは山脇」
梶本「予選もトップ通過だし、南3局で朝倉に親満放銃するまでトップでしたからねぇ」
金本「決勝は勝ちを掴みにいって敗れたので、それは仕方ないと思うんです。逆に、予選はもっと楽に決めてほしかった」
予選B卓オーラス。山脇は40800点でダントツ。二階堂がホンイツのテンパイ、しかも親の現物の北待ちで残り1枚をトップの山脇が持っている。すぐにケリがつくと思われたが山脇は北を捨てずに流局。西嶋が連荘を重ねてトップ目に立ち、さらに山脇が親に放銃したために当初の楽勝ムードが一気にピンチになったのである(結果的に西嶋・山脇が決勝進出を果たし、二階堂が敗退となる)
梶本「北を出し惜しみしたために、山脇もえらい寒い思いをしたでしょうね。『佐月の、たとえば四暗刻単騎のような手に放銃するのが嫌だったので』と話してましたが」
金本「それを言うならもっと警戒することがあると思いますよ。佐月が四暗刻単騎を張っていないことは、打っている気配で分かって欲しい。連荘されれば自分だって安泰じゃないし」
梶本「実際そうなりました(親の西嶋へ放銃)。たまたまドラがなく点数が安くて済んだだけでしたからねぇ。結果、勝ちましたけどバタバタ感のするオーラスでしたね」
金本「麻雀に判定での勝ち負けはありませんけど、この半荘で予選落ちすべきは二階堂ではなく山脇だと思いました」

プロの名手
予選A卓南1局 東家・朝倉ゆかり 31700点
配牌

トップ目で迎えた2回目の親番。配牌はソーズのホンイツ・345の三色・トイツ手など色々な方向性がみえる。孤立牌は東だが安易には切りづらい。重なれば仕掛けを入れても高得点を狙えるからだ。そこで朝倉は打3筒を選択。3筒を1枚残しても345は狙える。決断を下すのは次巡以降のツモや展開をみてからでも遅くない。手役作りのスキルを挙げたい人は、配牌から狙えそうな手役は何か、本当の不要牌は何かを探す努力を怠るべからず、である。


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