2018年5月19日(土)に、麻雀最強戦2018 女流プレミアトーナメント 決勝が行われ、愛内よしえが優勝、ファイナル進出を決めた。トーナメントを勝ち上がった4名による死闘を、オフィシャルレポーター・梶本琢程と最強戦実行委員長・金本晃がレポートする。

32分の1、遂に決着!
金本「女流プレミアトーナメント最終日は『女達の秘技』、そして各ブロックを制した4人での決勝戦が行われました。決勝メンバーは、女達の秘技で優勝した愛内よしえ、そして高宮まり・与那城葵・渡辺洋香です。梶本さんはこの中で誰が勝つと思いました?」
梶本「今回は渡辺かなと思ってました。一発勝負なら高宮の爆発力は魅力的ですが、今回は渡辺・愛内が高宮を走らせないような気がして。与那城は実力というより経験と自信がまだ不足だとみて、ここは正直難しいだろうとみました」
金本「実際、そんな感じで対局が進んでいきましたね。愛内と渡辺のマッチレースで」
梶本「渡辺は東1局の2本場、1メンツ落としてソーズのホンイツを決めたアガリが良かったですね(『光る一打』参照)」
金本「ああいう手筋は見ててワクワクします。馬場(裕一)さんとかが解説だったら間違いなく絶賛してるでしょうね」
梶本「このアガリで渡辺の士気も高揚したでしょう。渡辺は新旧女王対決のときも、打点を重視した一打が見事にハマって優勝したし。個人的にはこのホンイツが優勝の決まり手になるかもとすら思いました」
金本「そこから一気に爆発しましたね。高目一通のリーチをかけてラス牌の4筒をツモってリードを広げ、東ラスの親では愛内との2軒リーチ、同テン6-9萬待ち対決に競り勝っての6000オール」
東4局 東家・渡辺

梶本「4万点ある渡辺の親ハネツモで2着目愛内を突き放して。が、ここから渡辺にとって悪夢の展開が待っているのだから麻雀はホント分からない」
いいアガリは強気な押しがあってこそ
梶本「最終的にこの対局は愛内が逆転して優勝するのですが、対局後に渡辺が悔やんでいたのが与那城への満貫放銃でした」
金本「あ~、8萬単騎に刺さった局ですか」
梶本「はい。南入で北家の渡辺はソーズのホンイツ狙いでドラの5萬を捨てます。これを与那城がポン。そして次の形でテンパイしました」
南1局1本場8巡目 北家・与那城

梶本「ここで与那城は少考して打7萬で8萬単騎に構えました。相手からすればドラの5萬をポンした後に7萬手出しですから、周辺の6萬・8萬はケアするでしょう。ただ、ソーズのホンイツ4-7索待ちでテンパイしていた渡辺が8萬を掴んでツモ切り。与那城への満貫放銃となり、2着目の愛内との点差も7200点、親のある与那城も逆転トップがみえてきました」
金本「渡辺は『こういう部分は一生治らないと思うんです』と言ってました。でも、僕はこの放銃、好きですけどね。たしかに渡辺はトップ目だし無理せず、2着目・愛内の親流しをドラポンの与那城に任せる手もある。普通のプロならそうしてるはず。でも、渡辺が同じことをしたら他のいいアガリも出なくなると思うんです。ここまで手役を狙って強気に攻めて会心のアガリを何度も決めた人ですから。麻雀も人生もいいとこどりはできませんよ」
梶本(人生?フレないでおこう)



時にはアドレナリンで勝負!
梶本「この後、愛内が逆転して微差のトップ目に立ちます。そして山場の南3局。親の与那城がどこまで追い上げるかという状況です。その与那城が6巡目にカン3萬でリーチ」
南3局 東家・与那城 19700点

金本「ピンフイーペーコーの変化もありますが、とにかく3萬待ちが絶好の場況でしたね」
梶本「はい。下家の渡辺は4萬2枚を含めマンズを連打からのカン5筒チー。ピンズに走ったのは明らかな捨て牌。高宮も序盤から1萬・2萬、愛内も4巡目に打5萬でマンズをたくさん抱えている気配はなさそう。与那城からしたらこれ以上の待ちはないって感じです」
金本「この後、愛内と渡辺に押し返されても全然怖くなかったそうですよ。むしろ『どんどん来て来て』と」
梶本「でも、ここからが凄かった。まず渡辺がカン5筒待ちのホンイツ・一通でテンパイしてドラの発を勝負」
南3局 南家・渡辺 41100点

梶本「渡辺はこの後、ダブ南を暗刻にし、満貫確定の1-4筒のノベタンで全ツッパ体制。一方、渡辺の捨てたドラをポンして愛内も参戦します」
南3局 西家・愛内 42900点

金本「渡辺のドラはいつもポンされる(笑)。ただ愛内はここからが凄かった。渡辺がダブ南を暗刻にしたとき、9筒を手出ししているのですが、それに対して7筒・8筒を勝負してるんですよ」
梶本「普段は丁寧に牌を捨てる愛内が、この時は相当気合いを込めてスナップを利かせて打牌してました。愛内いわく『理屈じゃなくアドレナリンで勝負した』とか」
金本「アドレナリン! いいですね。愛内って、打牌の理由を聞かれたら論理的な根拠を言うタイプだったし、アドレナリンで打つとか意味不明なことを言うタイプじゃなかった。その人が初めて素直にこういう言葉を出して熱くなってくれるのは凄く嬉しいですね」
梶本「熱い人好きですね」
金本「冷静なのはコバゴーだけでいいです」
梶本「最終的には与那城が3萬ツモで決着したのですが、愛内は無筋の5萬も勝負して戦ってましたね」
金本「僕はああいう終盤で、トップ目だからと現物の2萬と入れ替えて安全にカン4萬にするプロを何度も見てきました。で、オーラスで先手を取って逃げ切る。でも、それで優勝しても全く感動しませんよね。この決勝のオーラスは愛内が役なしペン7筒リーチをかけてアガリ切るんですが、この南3局のアドレナリン押しがあったから、最終局のアガリ方にも共感できると思ってます」
梶本「単に早い手が入ったときだけ前に出る、って麻雀は面白みに欠けるということですね」
金本「そう!ファイナルでも愛内さんには技+アドレナリン、というかもう技はいいや、アドレナリンだけで男子プロにぶつかる姿を期待してます」
光る一打
決勝卓東1局2本場 北家・渡辺洋香 24000点 3巡目

【渡辺のアガリ形】


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