2018年9月30日(日)に、麻雀最強戦2018 全日本プロ代表決定戦が行われ、岩﨑真が優勝、ファイナル進出を決めた。200名を超える予選を勝ち抜いたプロ8名による死闘を、オフィシャルレポーター・梶本琢程と最強戦実行委員長・金本晃がレポートする。

親リーに攻め返す麻雀が面白い
梶本「さて、今回は全日本プロ代表決定戦です。この対局になるとそろそろ今年の最強戦も終盤戦に突入したなという実感が湧いてきますね」
金本「そうですね。ファイナルまであと2か月。残すは男子プロ代表・著名人・アマチュア、そして各団体のタイトルホルダーがファイナルへの切符を手にします」
梶本「今年も前日に予選が開催され、代表決定戦に進める8名が決定。ベスト16には女性プロが何人も勝ち進んでいたようですが、あと1つが勝ちきれず結局残ったのは伊藤奏子プロただ1人でしたね」
金本「はい、主催者としても女性プロ1名というのは少し残念ですね。ですが、日向杏介(ひゅうがきょうすけ)・山田学武(まなぶ)など一度残ったことのあるプロがまた出てきたという『おかえり組』が2人もいたのは嬉しい。勝ち上がるだけでも難しいのに、二度目というのはやはり強者なのだということを実感させてくれます」
梶本「では、今回の全体の感想を聞かせてください」
金本「まず入場シーンですね。入場シーンは絶好のアピールチャンスですが、今回もそれを生かす人が多くて楽しかったです。見られる存在ということを少しずつ分かってきてくれてる。厚谷(あつや)昇汰など将来有望だと思いますよ」
梶本「解説の瀬戸熊直樹プロは『麻雀もあれぐらいしっかり決めてきてくれれば…』と。そっちに走りすぎるのは否定的な感じでしたが」
金本「もちろん麻雀でも見せてほしいのは言うまでもありません。ただ、入場シーンなどはやる気とアイディアさえあればできることですから。両立させてくれれば僕としては最高です」
梶本「他に気になったところは何でしょう?」
金本「決勝戦のテンポが良かったですね。半荘1回が約65分。これは今年最速でした。視聴者の見やすさを考えれば、これがベストの速度だと思います」
梶本「流局も一度だけで、ほとんどがアガリ決着でした」
金本「はい。淡白でつまらないアガリではなく、毎局ぶつかり合いの戦いがみられてよかったです。やっぱり試合が長くなる要因として、親のリーチに対して子がオリ過ぎてるんだなと再認識しましたよ」
梶本「決勝はむしろ親の攻撃を子が潰しに行ってました」
金本「だから締まって見れたんだと思います。一位を取るには親の連荘を許してはいけないということを理解している4人だった。面白い麻雀でとても参考になりましたね」
梶本「今回の委員長は甘口バージョンですか?」
金本「いや、個々には気になったところもありましたよ。たとえば、予選で惜敗した伊藤はやや思い切りに欠けて勝ちづらいかなと。テンパイ即リーしなくて、相手に動かれたり自由に打たれて損をしていると思いましたね」
梶本「慎重さが裏目に出た感じですか」
金本「はい。あと決勝に進んだ小南(こみなみ)も予選はイマイチでしたね。東1局にラッキーな満貫をアガった後のゲーム回しが、遠い仕掛けを入れて誰も来なければいいけど、1人は攻めてくるのだからその度にオリるのは危なっかしい」
梶本「手牌を短くして、かつ守る場面をよく見ました」
金本「予選はたまたま逃げ切れたけど、どっしり構えていたら圧勝したんじゃないですか?」
梶本「同じ仕掛けるなら誰も来れないような迫力ある仕掛けにすれば逆に安全だったりしますしね。ま、毎回そんな都合よく行かないですけど」



仕事人・岩﨑がファイナルへ
梶本「さて、では優勝した岩﨑真の話題に移りましょう」
金本「岩﨑は一番落ち着いていたというか、難しい局面でも間違いがなかったですね」
梶本「いやいや委員長。間違えないどころの話じゃないですよ。あの人はいわば仕事人です。誘惑にも駆られず、自分のなすべきことをキッチリ遂行する。そんなイメージですよ」
金本「梶本さん、観戦中も結構絶賛してましたもんね」
梶本「たとえば、南1局のこの手」
南1局5巡目 南家・岩﨑 27600点

梶本「これ委員長なら何切ります?」
金本「2筒ですかね」
梶本「でしょ。でも岩﨑は9筒を切った。たしかにトップ目だからリャンメン2組ある手から一通は不要。ピンフドラ1でいいのは分かる。でも、念のために一通をみて2筒切るじゃないですか。でも、2筒切りは3筒ツモがロス。一通が不要なら打9筒でいい。この判断を瞬時にできるのが凄いです」
金本「この局は岩﨑が1000・2000でアガってトップ目に立つんですね」
梶本「で、大接戦で迎えたオーラス。ここも難しい手牌を岩﨑は見事に捌きました」
金本「あれはアガれない人も多いでしょうね」
梶本「まず、ここ」
南4局5巡目 西家・岩﨑 29400点

金本「ここはさすがの岩﨑も長考。40秒以上考え、結局打1萬で2シャンテンに戻しましたね」
梶本「でもアガれば優勝の場面で、イーシャンテンの誘惑は相当強いはず。ここで2シャンテンに戻せるのは相当な胆力が必要です。もちろん普段ならそう打てても、ここ一番では裏目の3萬ツモが怖くてペンチャン落としできない人が多いと思うんです」
金本「ペンチャン残しがズバリ決まることもありますからね」
梶本「南1局の打ち方とこのオーラスの構え方。私が岩﨑の麻雀を『冷静な仕事人』だと評する理由はここですね。ファイナルでも大仕事するんじゃないかという予感がします」
金本「その後も難しい選択でしたが、上手くアガれましたね。そう考えると、岩﨑の手牌とツモで他のプロに打たせてもアガれないパターンが多かったと思いますね。優勝後に感想を伺ったのですが、『札幌で麻雀店をやっているのもあり、地震直後で大変な時期なので、少しでも北海道の麻雀ファンの励みになれば』って頑張ったそうです。そういうパワーは侮れないんじゃないかなと」
梶本「ファイナルの見所が1つ増えて良かったですね」

光る一打
決勝卓 南4局7巡目 西家・岩﨑真 25000点

アガりトップなのでピンフにさえなればOKの状況。雀頭がどうなってもいいように、普通は離れた8筒に手をかける人が多いだろう。だが、「9萬が場に3枚飛びで6-9萬待ちにはしたくない」と判断した岩﨑は8萬ツモ切りを決断。7筒引きの3メンチャンとソーズの伸びに賭けた。いざとなれば一通の仕掛けも可能である。結果、7筒引きで最高のテンパイを果たした岩﨑は、次巡6筒を引き寄せ優勝のアガリを決めたのだ。

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