アース製薬杯 男子プレミアトーナメント 手役の魔力【観戦レポート】

2019年5月26日(土)に、麻雀最強戦2019 アース製薬杯 男子プレミアトーナメント 手役の魔力が行われ、岩﨑真が優勝、プレミアトーナメント決勝進出を決めた。手役派プロ8名による死闘を、現最強位・近藤誠一とオフィシャルレポーター・梶本琢程がレポートする。

史上初!パーフェクト麻雀でモンダミンも点棒も独り占め~
史上初!パーフェクト麻雀でモンダミンも点棒も独り占め~

100年に一度の完全試合

梶本「今回は男子プレミアトーナメントの第2弾、手役の魔力の戦いについて振り返りたいと思います。さて、近藤最強位。今回の決勝では凄いことが起こりましたね」

 

近藤「岩﨑真の完全試合達成ですか」

 

梶本「近藤さんも麻雀プロのキャリアは長いですが、相手3人に一度もアガらせずに勝つなんて対局は滅多にないと思いますがいかがですか?」

 

近藤「対局者としても観戦者としても見たこともない。記憶にすらありませんね」

 

梶本「それだけ珍しいというか、麻雀番組の歴史の1ページに確実に残る試合でしたね。半荘1回最短8局、自分の親はノーテンで流局(流局率15%)。あと全てをアガった(アガリ率21%)としたら、ざっくりと約5千分の1。最強戦の対局が今年は57半荘ですから、最強戦を87年やってようやく出るようなもの。今回の決勝は12局の戦いでしたから、完全試合の出現率はもっと下がるでしょうね」

 

近藤「100年に一度出るか出ないかってことですか」

 

梶本「ちなみに近藤さんは岩崎と同じ最高位戦ですが 、よくご存じの方ですか?」

 

近藤「岩崎とは北海道や東京で何度か会っています。人当たりは穏やかで優しく、女性には甘い言葉を囁くイメージ。お酒はあまり飲まないけど付き合う。そんなタイプです」

 

梶本「ほうほう(笑)麻雀についてはどんな印象をお 持ちでしょう?」

 

近藤「麻雀は落ち着いていて、しかも臨機応変。場況も大切にしながら手役はそこそこに、メンゼン好形を優先するイメージ。打点の追い加減以外は、私に似ていると思います」

 

梶本「なるほど。では、決勝の対局を振り返ってみます 。決勝に進んだのは、平賀聡彦・岩﨑真・松ヶ瀬隆弥・井出康平の4名。優勝した岩﨑は東2局の親で8000オールを決めます」

 

東2局2本場 東家・岩﨑 29500点持ち

完璧な手順の8000オール
完璧な手順の8000オール

梶本「結果的にこのアガリが決定打になったのですが、その後も攻守にメリハリをつけて戦ってましたね。私は昨年の全日本プロ代表決定戦で初めて岩﨑の麻雀を見ましたが『アガれる形を見つけるのが非常に上手いという印象がありました。山読みというか、ツモれそうなところへ手牌を寄せていくのが巧み。シャンテン数にこだわらず、アガれそうなテンパイに持っていくためにはトイツやターツを払うこともある』という印象を受けました。なので、親倍ツモの前局の岩崎の選択は彼らしいなと思いました」

 

東2局1本場3巡目 東家・岩﨑 28000点持ち

梶本「ここで岩﨑は9索のトイツ落とし。味がある一打だなと思いましたが、近藤さんはどう思われましたか?」

 

近藤「私は1萬から切って、9索トイツ落としになりますが、9索からのほうが面白いかも知れませんね」

 

梶本「なるほど。今度は逆に強く出た局面について。南1局7本場13巡目に親の平賀がリーチ。これに対して岩﨑は

 

南1局7本場13巡目 南家・岩﨑 55600点持ち

というタンヤオの5-8索待ちテンパイ。そこから親リーに通っていない3筒・8筒をブンと押します。ただ、トップ目ですから平賀に打てば絶対優位な立場とはいえなくなる。この押しについてはどうでしょう?」

 

近藤「まず大事なことは親の安全牌がゼロということ。そして自分もいい待ちでテンパっている。また状況的にも、松ヶ瀬12800点、井出10800点なので親を蹴りにいくのは自分だけ。そう考えれば当然押しになりますね」

 

梶本「そうなんですね。何か絶対に放銃したくないから、1枚通れば3枚通ると考えて無理やり8萬とか3索とかに手をかけちゃいそう…」

 

近藤「イーシャンテンならそうする人もいるでしょうけどね。テンパイなら逆に『平賀は5-8萬か3-6索か4-7索であってくれ~、と祈りながら押すんですよ」梶本「なるほど。結果、平賀から8索を討ち取り、供託5本+7本場を掻っ攫うダメ押しのアガリになりました」

Mリーガー松本吉弘は無念の予選敗退。
Mリーガー松本吉弘は無念の予選敗退。

Mリーガー2人を驚かせた選択

梶本「岩﨑は若手とは言い難いですが、最高位戦の北海道本部の所属ですからプロ歴は5年ほど。でも昨年初めて最強戦に出場したときから落ち着いた雰囲気があありました。今回はベテランプロのような風格すらあった。やはり昨年ファイナルに出場した経験も大きかったんですかね?」

 

近藤「いや~、どうなんでしょう。彼の場合は天性のもののような気がしますよ」

 

梶本「そうなんですね。それは打ち手とては凄く強みになるし、非常に羨ましい。そんな岩﨑にあえてダメ出しをするならどんな部分ですか?」

 

近藤「ネクタイの締め具合は、どーなの? とは思いました。もっときゅっとしないの? それともこれがおしゃれ?」

 

梶本「きっとおしゃれのほうだと思います(笑)。ところで、近藤さんにもう1つ伺いたかったのがこの1局です(全体図参照)。南3局で2着目。ドラが3枚ある手で何を切るか? 岩﨑は4萬を捨て、さらに次巡の3萬もツモ切り。最終的に6筒ツモでリーチ。9萬を平賀から討ち取って、決勝進出を確実なものにしたという一局なのですが」

 

近藤「鳴いてタンヤオなら7,8萬落としでしょう。でもメンゼン志向であるなら4萬ツモ切りもある」

 

梶本「そうなんですね。この点数状況なら満貫でも十分と考えて7,8萬を捨てるだろうと思っていたので、ちょっとびっくりしました」

 

近藤「こっちはさほど驚きませんでしたが、次巡3萬をツモ切ったのは衝撃でしたよ。2萬と9萬の比較なのかな。タンヤオをみて2萬受けを大事にするか、それともリーチ時のアガリ易さを考えて9萬受けを良しとするか。岩﨑は後者を大事に考えた」

 

梶本「解説の鈴木たろうプロや園田賢プロも『仕掛けないタイプだからかな。メンゼン進行の効率を重くみたのでしょう』と仰ってましたね。そのお2人が控室で『我々鳴き屋にはその発想がないからな』と驚いてました」

 

近藤「全体図の手牌のままだと3-6筒のチーテンが取りづらいですからね。それはそれでリスクがある」

 

 

梶本「仮に7,8萬を捨てていたら、3萬も手に残るのでこういう形」

梶本「解説の2人は『ソーズの変化も期待できそうだし、より仕掛けを考えたくなる』ということでした。場をみると早い段階で4索が浅井・平賀から出ていて、2人の手に5索が薄そう。岩﨑が7索あたりを引いて5-8索受けが加わったらさらに強くなる」

 

近藤「岩﨑も仕掛けのメリットは当然考えた上で、あえて捨てた。その決断力は大きな武器です。ある程度強いのは知っていましたが、飄飄とした外見や雰囲気から『彼はどこまで本気なのだろう?』と思っていました。でも、彼は本物でしたね」

 

梶本「さて、最後に対局自体についてなのですが、今回のような決勝で1人がぶっちぎりになって他の人がアガらないと、どうしても『退屈だ』『眠くなる』というコメントが出やすくなる。相手3人は手作りが制約されてしまうからアガリが遠くなるのは仕方がないとしても、そもそも手作りの際に安全牌を抱えすぎなんじゃないかな、と思っていました。先ほど紹介した岩﨑の『安全牌がないから押す』じゃないですけど、手詰まりしない麻雀はありえないのだから、もっと手を広げてアガりに向かえばいいのかなとも思いますが」

 

近藤「確かに他の3選手は安全を求める選択が多かった。大事に打ち過ぎというか…もう少し踏み込んでもいいのでは? とも思いました。まあ、なるべく手詰まりしないように打つことも大切です。放送としては踏み込んで打ち合うほうが楽しい。その辺りは難しいところですね」

決勝戦左から岩﨑真、平賀聡彦、井出康平、松ヶ瀬隆弥。
決勝戦左から岩﨑真、平賀聡彦、井出康平、松ヶ瀬隆弥。
優勝し決勝戦チケットとアース製薬賞品をゲットした岩﨑真。左は実況小山剛志、右はアシスタント鈴木ふみ奈(前列)。
優勝し決勝戦チケットとアース製薬賞品をゲットした岩﨑真。左は実況小山剛志、右はアシスタント鈴木ふみ奈(前列)。

フォトギャラリー

レポーター

近藤誠一現最強位
近藤誠一現最強位
梶本琢程オフィシャルレポーター
梶本琢程オフィシャルレポーター