男子プロ代表決定戦 天使の吐息【観戦レポート】

2019年7月13日(土)に、麻雀最強戦2019 男子プロ代表決定戦 天使の吐息が行われ、金子正輝が優勝、ファイナル進出を決めた。手役派プロ8名による死闘を、現最強位・近藤誠一とオフィシャルレポーター・梶本琢程がレポートする。

金子正輝優勝!神様、ぼくは麻雀が楽しいです。
金子正輝優勝!神様、ぼくは麻雀が楽しいです。

個性豊かな打牌が目白押し

梶本「ひと月半にわたって行われた男子プレミアトーナメントが終わり、その次はベテランプロによる男子プロ代表決定戦。今回は『天使の吐息』と銘打たれた対局でした」

 

近藤「最初は女子プロの対局だと勘違いしてました。要は、打ちながらはぁはぁ言う人が多いからですよね」

 

梶本「A卓から鈴木達也・金子正輝、B卓から森山茂和・萩原聖人が決勝進出。その決勝は2時間半に及ぶ大激戦となりました。解説の近藤さんも大変だったでしょう?」

 

近藤「内容が濃かったので、そんなに長く感じませんでした。ただ体は正直だったのか、あとで観返すと南入から2局くらい自分が消えていて…すみません」

 

梶本「今回は門前型、特に手役を意識した打ち手が多かったので、興味深い手筋も数多くみられました。たとえば予選B卓南3局の馬場裕一」

梶本「ここで馬場プロは打4筒。ピンフのイーシャンテンに取らずの打牌で、放送のコメントでも疑問視する声が多かったのですが」

 

近藤「普通は8萬をそこまで残せないし、ドラの1萬も1枚で我慢する。でも馬場さんは、どこまでも678の三色を目指し、2枚目のドラの受けも残し、形式テンパイの可能性も追ったんですね」

 

梶本「次にドラの1萬を引いたら、3筒をトイツ落としということですね」

 

近藤「そう。だから残り2局で打点を刻むのではなく一撃のハネツモに照準を絞った、まさにこれは究極の選択だったと思います」

オリジナル手順で三色リーチを放った馬場裕一。
オリジナル手順で三色リーチを放った馬場裕一。

梶本「次は決勝の東3局。鈴木達也」

梶本「『ここで3萬切るのとか自分ぐらいじゃないですか?』と言っていたぐらい鈴木プロお気に入りの一打です」

 

近藤「これはソーズの形が良くないので、門前ならチートイツ、もしくは仕掛けてタンヤオが本線でしょう」

 

梶本「あ、それならそこまで尖った選択でもない?」

 

近藤「いえいえ。やはり面白いですよ。タンヤオチートイツまで欲張るなら1萬切りですが、ドラ2なので待ち頃の牌を残してアガリ易さを取ったのでしょう。また、タンヤオ仕掛けの場合、ドラを2枚使い切りたいので、3萬はほぼ不要牌。つまりチートイツが本線で発も1萬も残し、食いタンとの天秤もかけ、さらには守備力も上げるという秀逸な一打でしたね」

 

梶本「なるほどね。いや、今回の対局ではこういう打牌が目白押しでしたね」

オーラスいったんは見事なまくりを見せた鈴木達也。
オーラスいったんは見事なまくりを見せた鈴木達也。
書籍『逆境の凌ぎ方』さながらの打ち筋で予選を突破した萩原聖人。
書籍『逆境の凌ぎ方』さながらの打ち筋で予選を突破した萩原聖人。

相手によって対応は変わる

梶本「さて、優勝したのは金子プロ。予選A卓では、親っパネツモで大きなアドバンテージを築きました」

梶本「さて、近藤さん。この手はヤミテンでも親満確定。2着勝ち上がりの予選であれば、手堅く出アガるためにリーチをかけない選択もあると思うのですが」

 

近藤「予選直後に金子さんと話したのですが」

 

金子「あれ、誠一はどうする? リーチ?」

近藤「はい!」

金子「やっぱりな!」

 

近藤「もちろんアガリ逃しは痛いので、私もヤミテンは考えます。ただ、金子さんとの共通認識としては、4-7索が今にも切られそうな状況ならヤミテンもある。でもあの場面は、ソーズが高く簡単に出そうにない。であれば、相手に自由に打たれる事の方が痛いこと、そして6000オールは偉いことを優先させてリーチでしょうね」

 

梶本「なるほど。では、決勝の話題に移りましょう。予選同様、決勝でも金子プロがリードしました。そこで、金子プロの上家の鈴木プロは、金子プロが仕掛けたら徹底的に牌を絞ったそうです」

 

近藤「達也は、本当に我慢の一日でしたね。これだけ我慢が続くと、何かおかしくなりそうですが、それでもぶれない達也は流石でしたね。特に達也は金子さんの上家だったので、本当に難しかったと思いますが、究極的な絞りで対抗していたと思います」

 

梶本「鈴木プロ自身は、自分に手が入ってアガりだした南場より、この東場の打ち方を気に入っているようでした。金子プロとの対戦回数は少ないと思いますので、金子プロというより門前手役派との対局だっただけに、仕掛けが入ったときにより気を遣う(2つ目以降も鳴かせたら簡単にアガられてしまうので、牌を絞る)という対処だったのかもしれませんね」

 

近藤「ただ最近の金子さんは軽い仕掛けもあるので、少し意識過剰かなとも思いましたけどね」

 

梶本「近藤さんも相手に応じてこういう切り替えをされたりしますか?」

 

近藤「ええ。私は相手によって選択はかなり変わります」

ここ一番で乗せた裏ドラ

梶本「その後、トップの金子プロを鈴木プロ・森山プロが追い詰め、南4局でラス親の鈴木プロが親ハネツモで遂に逆転。続く1本場を流せば鈴木プロの優勝でしたが、金子プロが差し返しての逆転勝利でした」

 

 

近藤「その1本場、ハネツモ条件で金子さんの手は難しかったですね(全体図)」

 

梶本「ここで金子プロはマンズの一通の芽を残す5筒を切りました。この場面、近藤さんならどう考えて何を切りそうですか?」

 

近藤「567の三色のためだけでなく、1メンツを構成すという意味でも5筒を残し、打9索でもいいかなと。でも一通に気があって、6-9索で雀頭を作る道もあるので、本当に悩ましい。私なら一通をあまり頼りにしていないので、ここは打9索かな。一通でドラ1の場合、裏ドラが必要ないのは、8萬を先に引いて1萬でアガるしかない。やはり本線はドラの8索を重ねてのツモアガリですからね」

 

梶本「その後、金子プロはこの形でテンパイします」

近藤「5筒切りの後にマンズの内側が伸びてタンピンに切り替えて打9索。その9索がフリテンですが、どのみちツモ限定ですからリーチで3-6索をツモって一発か裏ドラに賭けるのみ。南家だからハイテイでもいい」

 

梶本「鈴木もすぐにこれに反応して一発とハイテイを同時に消す仕掛けを入れましたが、結果金子が3索ツモ。祈るようにめくった裏ドラ6萬が乗って逆転勝利を飾りました」

 

近藤「この日、予選と決勝を通じてこの時だけ裏ドラ乗ったんですよね」

 

梶本「解説でも『金子さんは裏ドラが乗らない』ってネタにしておられましたよね?」

 

近藤「昔、金子さんが飯田さん(※)によく文句を言っていました。『裏ドラが乗って羨ましい』って。それもあって金子さんは裏ドラが乗らない印象が強いんです」

 

梶本「最高のタイミングで乗りましたね」

 

近藤「最強戦も第1回から出場なのでもう30年、最高位戦もAリーグ在籍38年ですからね。凄いですよ」

 

梶本「年齢も重ね体力的な部分もあってこれは物凄いことだと思いますが、それができるのはなぜでしょうか?」

 

近藤「体力的な負担はとても大きいと思いますので、執念とか、根性の領域だと思います。一般的には『若い人達の考えを、今もなお取り入れているからだろう』という印象があるかもしれません。もちろんそれもある。ですが、逆に若い人達が考えていることを把握した上で闘う。その姿勢が金子さんの強さを支えているのだと思いますよ。そしてなにより、麻雀が大好きなのだと思います」

 

梶本「なるほど。それにしても金子プロの勝った時の表情をみると、何だかこっちまで嬉しくなりますね」

 

近藤「やはりスーパースターですよ」

 

※飯田正人…いいだまさひと。長年、金子プロと激闘を繰り返したライバル。通算10期の最高位を獲得した永世最高位。2012年、大腸がんのため亡くなった。

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近藤誠一現最強位
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梶本琢程オフィシャルレポーター
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