男子プロ代表決定戦 悪魔の逆襲【観戦レポート】

2019年8月25日(日)に、麻雀最強戦2019 男子プロ代表決定戦 悪魔の逆襲が行われ、白鳥翔が優勝、ファイナル進出を決めた。冷静沈着な頭脳派プロ8名による死闘を、現最強位・近藤誠一とオフィシャルレポーター・梶本琢程がレポートする。

最強戦史上最高の神対局!
最強戦史上最高の神対局!

ドラの字牌をどう扱う?

梶本「一線級の男性プロが集結した今回の『悪魔の逆襲』ですが、特に決勝戦は逆襲に次ぐ逆襲でしたね」

 

近藤「本当に歴史に残る対局といってもいい展開と内容でしたね。南場の白鳥の親から連荘と流局で途中11本場とか、途中で持ち点が1万点前後だった猿川(真寿)や多井(隆晴)が最終的にトップ争いを演じたりとか。麻雀が凄すぎて涙が出るほどでした」

 

梶本「では、まず東2局1本場。勝又が親の猿川に満貫を放銃した次局、8巡目にチートイツ、ドラの北単騎待ちでリーチをかけます」

 

東2局1本場 西家・勝又 12700点

梶本「で、親の猿川が食いタンの仕掛けを入れた後、多井もこの形のイーシャンテン」

 

南家・多井 26100点

近藤「ドラの北は場に1枚切れで、一緒に解説していた村上淳は『メンタンピンのテンパイなら北切るかな?』って言ってました」

 

梶本「私もそうかなと。ですが、この後多井は上家の8筒をチーして食いタンのテンパイ。北で放銃となりまして。これが正直意外で。供託と積み場があるとはいえタンヤオのみだと見返りが小さいかなと思っていたので」

 

近藤「この局はまず、親の猿川が7巡目にドラの北を捨てているんですね。こういうとき、北を持っている打ち手は合わせ打ちしないケースが多いんです」

 

梶本「猿川からもうすぐリーチがかかりそうだから、安全牌として持っておこうと」

 

近藤「そう。プラス自分の打点を上げるためにしばらく持つ。実際、子の3人は北を抱え、勝又の北単騎のテンパイが入った。で、勝又は自分の捨て牌がチートイツ臭が薄い(メンツ手っぽい捨て牌)こともあってリーチに踏み切りました。前局に親満を放銃して、打点が必要だったこともあります。が、もしかしたら勝又は『仮にチートイツのドラ単騎待ちの可能性を考慮されても、それならヤミテンするだろうと読んでくれれば』との期待があったかもしれません」

 

梶本「ヤミテンなら、抱えていた北をそのうち討ち取れる。勝又ならそうするはず、と読ませて、逆に北を出やすくする作戦ですか」

 

近藤「多井が北を捨てたのは、おそらく勝又の注文にハマってしまったのでしょう」

 

梶本「ちなみに近藤さんは字牌のドラ、今回のように誰か先に捨てて自分が持っているときはどう扱われますか?」

 

近藤「序盤は合わせ打ちしない、終盤は合わせ打ちするのが基本でしょう。序盤は自分の打点アップのためと、その人限定の安全牌。終盤は、その人がすでにテンパイしていることも多く、直後に他家がテンパイすることも多いので、合わせた方がいいです」

1枚切れでも切らない字牌

梶本「この対局では字牌について興味深い局面がいくつかありましたが、南1局3本場の白鳥の一打」

 

南1局3本場 東家・白鳥翔 58200点

梶本「下家の猿川が序盤からマンズの一色手に向かい、2萬が余った直後。白鳥は断トツだから無理せずにテンパイを取らない手もあるかと思いますが

 

近藤「この北切りは2つのメリットがあります。まず4-7索自体が非常にいい待ちということ。そして自分がアガれば他家の高打点のアガリを蹴れる。2着の多井とですら3万点以上の差がある状況だと、いくら親が残っているからとはいえ安手で流す可能性は低い。だから、白鳥自身の手は安くてもアガる価値は非常に高いんです」

 

梶本「なるほど。で、この北が猿川にポンされて、発中待ち(中は場に2枚切れ)のハネ満テンパイが入ります。で、この後、多井は場に1枚切れの発、テンパイの白鳥も1枚切れの白を止めます。ただ、それぞれ猿川のドラポンの少し前に場に出た牌で、『これが当たりになるなら先に鳴くでしょ?』と思って切る人もいるかと思いますが」

 

近藤「白鳥の白止めは、ドラポンされた以上、もう危険牌は1枚たりとも捨てないということで当然の対応。また、多井は、この日の雰囲気から自分のテンパイで発を打つかも?とは思いましたが、猿川の待ちがある程度絞り込め、大きな失点に繋がる可能性もあったので止めました。これも好判断でした」

 

梶本「ション牌なら止めても不思議ではないですが、1枚切れでも止めれますか?」

 

近藤「1枚切れの字牌でも、危険牌には変わりありませんから。後で重なったケース、スルーしているケースも考慮しますから。手変わりがない場合でも、相手の手・自分の手と相談します。局収支が見合あえば初めて勝負する価値があると考えますね」

 

梶本「最強戦のようなトップ取り麻雀でも?」

 

近藤「いや、そうとも限りません。1回勝負ならたとえ期待値がプラスでも、大きな失点だけは避けるという選択もあります。逆に期待値がマイナスでも、大きな得点を狙うこともあります」

 

梶本「ちなみに近藤さんならそれぞれどう打ちました?」

 

近藤「多井が勝又に放銃した北、あるいはこの局の発はどちらも切りません。いかに深く読んだとしても危険度がゼロではなく、失点したときのダメージが大きいので」

 

梶本「白鳥のテンパイでのドラ北切り、あるいはポンされた後の白は?」

 

近藤「白はもちろん、その前北も、ポンされてのツモでの失点を避けたいので止めます。北を切らずにテンパイできなくても、最小失点に抑えることを優先します。テンパイ料の失点も痛いですが、勝負するなら大きな得点が見込める時、と考えますから」

我慢で魅せた猿川の選択

梶本「この半荘、二転三転し最終的にはアガリトップの多井、ひとアガリで逆転する白鳥・猿川の三つ巴となり、白鳥が多井をマクって優勝。このオーラスも見応えありましたが、ここでは猿川の凄い一打について伺いたいと思います(全体図参照)」

近藤「四暗刻イーシャンテンの猿川が白鳥のリーチを受けた直後ですね」

 

梶本「猿川はまだ2着目ですからね。ここはほとんどの人がカンしてもう1牌引きたいところ。ですが猿川はカンせずに南を押しました」

 

近藤「4筒が4枚見えで、6-9筒も通しやすい。だからいざというときに6筒を切れる構えをとったのでしょう。とはいえ、ドラ暗刻でこの形になればオリたくない。カンしたくなるのが人情ってもんですよ」

 

梶本「白鳥のリーチは1-4索待ちで、猿川はリーチの直前に4を上手く処理していたのですが、再び4を引いてしまう。ここで6筒を1枚外す。もし、先にカンしてたら放銃で終わっていた可能性もありました」

 

近藤「本当に冷静でしたよね。で、マンズのメンホンの勝又の追っかけリーチの後、猿川は1まで掴んじゃって。やむなく暗刻の6筒を外す。でも、これは2軒リーチで白鳥が勝又に放銃する可能性が出ましたからね。現状の点差もそう大きくはないし、ここで突っ込んで放銃するより、残りの局で逆転する可能性に賭けたのでしょう」

 

梶本「で、途中では猿川もこんなテンパイで追いつく」

 

南3局6本場 東家・猿川 42400点

近藤「1索を重ねてフリテンの4索単騎。アガれる可能性はないですが、このテンパイ復活も衝撃的でしたね」

 

梶本「結果は流局しましたが、本当に見せ場十分の1局。この半荘はそういう戦いのオンパレードで。もしDVDが手に入るようなら、永久保存してもいいですよね」

 

近藤「間違いなく歴史に残る1戦だったと思います」

オーラスなりふり構わずトイトイに走った白鳥。最後に多井の4索を捉えた。
オーラスなりふり構わずトイトイに走った白鳥。最後に多井の4索を捉えた。
ロン牌ビタ止めや清一色テンパイなど見せ場を作った猿川。
ロン牌ビタ止めや清一色テンパイなど見せ場を作った猿川。
オーラス白鳥にまくられ悔し涙を流す多井。
オーラス白鳥にまくられ悔し涙を流す多井。
神対局を制し初のファイナル進出を決めた白鳥。
神対局を制し初のファイナル進出を決めた白鳥。

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近藤誠一現最強位
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梶本琢程オフィシャルレポーター
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